室生犀星  「犀星文学碑」

旧軽銀座と呼ばれる商店街を抜けて、道をしばらく北へ進むと、分かれ道がある。そこを
左に曲がると、小さな川が流れており、その川のほとりに、この碑がある。碑というより、石垣の
側面に埋め込まれている、といった方が適当かもしれない。石垣の草が、覆い被さって露にぬれ、
まるでひとに見つからないように、隠れているような風情だ。
そこに刻まれた犀星の詩、「我は張りつめたる氷を愛す」を読み始めるとその激しい情熱と、とぎすま
された言葉に圧倒される。緻密に計算されたレイアウトにも犀星の思い入れが感じられる。

犀星文学碑
我は張りつめたる氷を愛す
斯る切なき思いを愛す
我はそれらの輝けるを見たり
斯る花にあらざる花を愛す
我は氷の奥にあるものに同感す
我はつねに狭小なる人生に住めり
その人生の荒涼のなかにしん吟せり
さればこそ張りつめたる氷を愛す
斯る切なき思いを愛す
  昭和三十五 十月十八日
            室生犀星之建


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長野県軽井沢町旧軽井沢